武が小学生に上がった。
本当に嬉しそうにランドセルを眺めては、「やっとにーちゃんとおそろいになれた」などと可愛いことを言ってくれる。
俺の入学式では拗ねてしまって知恵熱まで出したくせに、今回は嬉しすぎてなかなか寝付けないそうだ。
武なら学校でもたくさん友達ができるだろう。


「あ、あのねくん、お花をつける係りになってもらってもいいかしら?」
「良いですよ」
「…そう、ありがとう。それじゃあ明日の入学式、よろしくね」


若い先生はそれだけ言って教室から出て行った。
未だに友達の一人もいない俺に気を使っているのは良く分かっている。
一人でぼんやり外を眺めている俺を捕まえては、他の子供たちの輪の中に入れようとしてくれた。
先生にとっては俺は、「友達を作れない」生徒という認識なんだと思う。


俺がマトモに話せる相手は、”家族”だけなのに、だ。



「(花か…武に付けてやりたいな)」





俺が、本来の俺を包み隠さず周りに晒せるときが来るのは、あとどのくらい先なんだろう。





それとも、「中身」と「外見」が食い違うカラダでは、そんな日は一生来ないのだろうか。









早く大人になりたいと思った。

本当の自分を早く、早く取り戻したい と―――――――。












成虫の艶姿に焦がれる蟲が

枯葉の下で身動き一つ。