『団長もずっとキミを探しているよ★殺されはしないと思うから、意地を張らず一度は顔を見せてあげたらどうだい?◆』
ズキズキズキ
「(ちくしょう…)」
痛む右手を押さえ、俺は4回目の舌打ちをした。
「(あ〜もう、何でこんなことに…)」
手袋を取り去り、巻いてあった包帯を更にきつく巻く。
こんなことしたって無駄だってことくらい分かってる。
なんたってこれは、泣く子も殺される、あの幻影旅団の呪いなんだからな!
「あ〜〜〜〜〜やめやめ!!」
「「「「「!!!!!!(ビク)」」」」」
考えたってどうせ今じゃ何も分かりっこねぇ。
とっととこんな試験終わらして、早く自分の修行に打ち込みたい。
あ〜なつかしいな。ジンさんの24時間耐久濁流水泳。ってジンさんはもう居ないんだっけ。
…俺、これからどうすればいいんだろう。
いや、目的はハッキリしてんだけど…。
けどなぁ。
一気にやる気無くしたんだよなぁ。
幻影旅団って……。
ハァ。と12回目のため息を吐いた時。新たにボロボロになった受験生の一人がたどり着いた。
「これにて一次試験を〆切る!合格者100名!」
…アレが一次試験の試験官だったのか…。
もっさいオッサン。でも、アイツじゃない。
「(名前とかあったっけ…。2刀流ってことしか覚えてねぇや。あれ、4刀流だっけ?)」
あ〜もう記憶が曖昧だ。ハンターズガイドまで買ってた意味ないじゃん。
アイツが出てくれば、ヒソカはこの試験から居なくなるハズなんだ。
4刀流には申し訳ないけど、出来るだけ早めに登場してほしい。
俺は祈る気持ちで二次試験の試験官を待つ。
さっきから変な女の熱烈な視線を感じるけど、きっと気のせいだ。
その女が念能力者っぽいだなんて、もっと気のせいだ。
「うふふ…。思ったより時間がかかったわね」
「(しゃべるなしゃべるなー!!)(てか、え、何か声低くない!?)」
俺は真後ろで聞こえる声から必死に逃避する。
「しかもむさ苦しい男共ばかり…。ね、そうは思わない?」
「ヒィ!!」
耳元で息を吹きかけられ、俺は情けなくも悲鳴を上げてしまった。
「あなたは可愛いけど」
何故か抱きすくめられ、俺は違うことに気付き更に悲鳴を上げそうになった。
「(この女俺よりデカ…って違う!そうじゃなくて、硬ェ!!!)」
どこがって!?
色んなトコロだよ!!!!
「これから二次試験の説明をするわ。試験官はこの私、ロゼリザよ」
その言葉を聞いた受験者が、ガバっと一斉にコチラを向く。
レディーススーツをパリパリに着こなすガタイの良い女を見てなのだろう、半数以上の受験者の顔色が一気に悪くなる。
…フッ。俺からは顔は見えないけど、更に見たくなくなったぜ。
「二次試験も、アナタ達のような単細胞でも覚えられる簡単な試験よ」
どうでもいいけど早く開放してほしい。
この女(?)の一言で、一気に殺気立った視線が俺にまでぶっ刺さってきた。
一つ尋常じゃない殺気を感じるけど、たぶん間違いなくヒソカなんだろうな…。
「ルールは2つ。目的も2つ。良い?よく聞くのよ」
「ちょっと待てよ!俺は今来たばっかなんだぜ!?」
最後に入ってきた受験者が声を張り上げる。
明らかに疲弊したソイツは、もう少し休む時間が欲しいと言って不平等を訴えた。
「ぐぇっ」
ちょちょちょ、待て!苦しいって!!!!
明らかにロゼリザの抱きしめる力が増し、オーラも雄々しいモノへと変わる。
どちらも直撃した俺は、カエルを踏み潰したような声を上げて「ギブギブ!」とばかりにその逞しい腕をぺちぺちと叩いた。
「あらっ!ごめんなさいね、苦しかったでしょ?」
そうやって覗き込んできた彼女(?)の顔は、意外と綺麗なものだった。
ま…女に見えるかって言われたら、厳しいとは思うけどね…。(だってうっすら顎ヒゲが…)
「…アナタに一つ忠告しておくわ。今はすでに二次試験の最中。ルールは、試験官のこの私よ。
生かすも殺すも私次第。恨むなら、もっと早くに辿り付く事の出来なかった自分の力の無さを恨むのね」
「…っ!」
…あ、なんかちょっとこの人カッコいいかも。
相当強いだろうってのは分かるけど、なんか今の雰囲気が…少しカイトさんに似てる。
「…クスッ。惚れちゃった?」
「なっ!?!?!?!?///」
くるっと体を反転させられ、顎を取られてたちまち目前に迫る美しい顔。
何この状況!?いくら美女でも誰も羨ましがらないっつーの!
てか、惚れねぇ!!
シュッ
「…彼も納得したみたいだし、好い加減試験の説明でもすれば?◆」
「…そうね」
何事かと顔を上げれば、トランプを指で挟んでニヤリと笑うロゼリザが。
…ホント何この状況?
こんな路線の話じゃねぇだろうが…(うあああ)
「二次試験の目的は、再び一次試験の開始された会場まで辿り付く事。そしてもう一つ、その道で現れる仕掛け人を必ず一人は倒して、持っているバッチを手に入れること」
ザワッ…
「またあの道を…?」
「仕掛け人ってどんなヤツだ?」
「★」
その内容にどよめきが起こった。
そんな空気を嘲笑うように、ロゼリザは更にこう続ける。
「更にルールとして時間制限が付くわ。1時間以内に辿り付く事。それと…受験者同士の争いは即退場よ。
他人の持ってるバッチを手に入れても、コチラが隅々まで監視している限り合格は認めないわ」
OK?と彼女は不敵に笑って首を傾げた。
「一つ…良いか」
受験者の一人が控えめに手を挙げる。
「何?」
「その仕掛け人は一体何人居る」
「現在残ってる人数に合わせて、100人よ」
「…分かった」
「どう?もう質問はない?
…それじゃあ、開始」
その声と同時に一斉に走り出す受験者。
ロゼリザに意味ありげなオーラを飛ばしていったヒソカを最後に、その場には俺とロゼリザと一次試験の試験官しか居なくなった。
「おい、シュ…ロゼリザ。その69番はどうするんだ?」
「うっさいわね。ちょっとアンタは黙ってて」
「…(可愛そうに)」
え〜っと…。
時間制限があるなら俺も早く行きたいんだけどな…。
この能力を使えば、そんなに手こずらないとは思うんだけど。
「ねぇアナタ」
「…何?」
さっきまでとは雰囲気が少し違う。
相変わらず抱きしめられてて顔は近いけど、明らかに其処には「男」の顔をしたロゼリザが居た。
「アンタ、何者だ?」
俺にとってこの出会いは
良くも悪くも 衝撃的なものだったと思う。
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