※四次試験後の空白の時間のお話です
ふと今頭を過ぎった考えだ。
「前の奴の解答用紙」
と、検索をかけて「千里眼」を使ったとしたら。
「フッ…それもすべて過ぎたこと、か」
どれだけ自分が混乱していたかを改めて認識するだけの結論に失笑。
俺は今、最終試験が行われている部屋の前のベンチに座っている。
本当なら俺もこの中で己の腕を存分に揮いライセンスを頂くはずだった。(試験内容は分からんが取り合えずバトルらしい)
本心を言えば、合格は確実にできると思っていた。
カイトさんに言われたのもあるけど、実際に試験に参加してみて「ああ、大した事ないな」と感じていたのだ。
それも全て、既に念を習得しているから…だというのは自覚してるけど。
それだけにこの事実は予想以上にショックだった。っつーか予想なんてしてなかったよ。
「あー…来年は試験受けられないからな…」
「なんでだい?」
「
っっっぎゃああああああああああああ!!!??」
すぐ側で聞こえたステレオヴォイスに思わず絶叫。
「なっなっ ヒソカ!?お前、最終試験は!?」
「ああ、さっき失格になったからねv」
「(やっぱりボコボコにされたのかあの試験官…)」
経緯等はなんとなく聞いてはいけないような気がした。ヒソカからは聞いてはいけないような気がした。
「で、なんで来年は試験を受けられないの?」
「うっ、え、いやヒソカには関係ないだろ…!?」
「そんなことないよ☆僕は来年も試験受けに来るつもりだから、にも来てもらわなくちゃ面白くないだろ?」
「お前を喜ばせる為に命の危険を侵しにはいきません!」
「ちぇ(わざと失格になった意味がないじゃないか)」
ヒソカの登場に一段と気疲れが進行する。…なんで俺はココにいるんだろう。
ハァ、と深い溜息を吐くと、ヒソカはクスリと笑って隣に座った。
いやいやいや居座るなよ。
「ちょうど良いし、ゆっくりお話でもしようかv」
「……(不味いな、逃げるか)」
さっさと退散するべく立ち上がろうとしたその時、ヒソカは囁くように言葉を発した。
「そうだなぁ…例えば今の団長達の様子とか」
ズキッ
団長、その一言に鋭い痛みが右手全体に広がる。
一瞬動きを止めた俺に、ヒソカはニヤリと哂った。
「君が旅団を抜けたのは4年前だっけ?それならちょうど僕が旅団に入ってからだからメンバーは変わってないよ」
「……俺には、関係ない」
「そんなことないだろう?共に駆けてきた仲間達のことだ★気にならないハズがない」
立ち上がるのを諦めヒソカに視線を向けると、心底意地の悪い笑みを浮かべていた。
コイツは今、俺を試そうとしているのか。カマかけとハッタリはヒソカの十八番だ。
…残念だけど、ハッタリなら俺だって負けない。
「お前が何を探りたいのかは知らないけど、残念ながらあいつらの動向なら俺もある程度は把握している」
「へぇ。やっぱり完全に縁を切ったわけじゃないんだね」
「その辺はお前には関係無いだろ」
もう一人の””が、どんな理由で幻影旅団を脱退したのかが分からない以上、余計な発言はボロを生むだけだ。
…あ、もしかしてヒソカの奴も…。
「…俺のこと、クロロ達からは何も聞いてないのか?」
「ん〜昔話とかならたまに聞くねv」
「(やっぱり。ヒソカも””が抜けた理由までは知らないんだな)」
クロロ達が話していないのか、それとも…。
クロロ達
すら、””が抜けた理由を知らないのか。
「その話はまあ良いや☆君、この後は行く当てはあるのかい?」
「いや、別に……(ってうわぁヤベ!)」
「そうかそうかvじゃあ僕と一緒に「
あーーーそういや俺、人と待ち合わせしてるんだった!その人と今後のことについて相談とかしなきゃいけないから残念だけどヒソカとは一緒にはいけないなあ!」
「…………そう☆」
冷や汗ダラダラ死に物狂いでなんとか最悪の事態回避。ヒソカと恐怖の小旅行に比べたら筋肉オカマに頭下げる方がマシだっての!
…ここでの嘘百発がまさか二時間後には現実になろうとは思いもよらなかったけど。
ハハ〜と乾いた笑いを浮かべながら少しだけ距離を開ける。コイツのオーラは纏の状態でもイヤ〜な感じがするからな…。
「で」
「ヒィッ!」
そんな俺に顔をグィっと近づけてヒソカは口を開いた。
「あの試験官とはどんな関係なの?」
ホラあの二次試験の。と言うコイツの目は、笑ってはいなかった。
そんなん俺だって知りたいっての!ううういい加減にどっかいってくれ〜〜〜
「んなのしらねーよ!つかもう俺に構うな!」
「知らない?じゃあ勝手に向こうが付きまとってるってことなのか☆それじゃあ僕が殺してきてあげようか?v」
人の形をした物騒はとんでもないことを言い放った。
「そんなんしたら俺にとり憑きそうじゃねえか!」
「だって僕も彼のこと気に入らないし★」
「俺だってそうだけどダメなもんはダメ!」
「ちぇ。じゃあが相手してくれるのかい?試験があまりに退屈だったからストレス溜まってるんだよね◇」
「
ぜってーヤだ」
「つれないなぁ。ま、良いけどv(を殺すのは僕だからね◇)」
やっぱヒソカとはどう転がってもウマが合う気がしない。よほど人間を捨てない限りコイツとはまともな会話ができないだろうな。
なんだか急激に緑に囲まれて癒されたくなってきたその時、試験会場のドアが開いた。
中から出てきたのは、白い髭をたっぷり蓄え貫禄もたっぷりな老人と、その使いのマーメン。
予想外の人物の登場に俺はハッと目を見開いた。
次元の違う存在。
目の当たりにして初めて肌で感じるその重圧。
……これが、ハンター界トップの実力者か。
「なんじゃなんじゃ、外がずっと騒がしいと思っとったら、落ちこぼれがこんなところで何をしておる?」
「……人を待ってるんです」
「ふぉっふぉっふぉ。そーかそーか。ま、読み書きが出来るようになったらまた来年も来なされ」
扇を仰ぎながら去ってゆく後姿を追うように、マーメンもペコリと頭を下げてからその場を去っていった。
ネテロの立っていたその場にだけ、オーラの柱のようなものが見える。
あんなバケモノが存在するのが、この世界の本当の恐ろしさだ。
ジンさんやヒソカもつくづく常人ではないが、それが当たり前のように存在するのがこのハンターハンター界。
…やっぱり鍛えておいて損はないよな。死にたくないし。
「もう最終試験も終わったみたいだね、じゃあ僕はそろそろ行こうかな◇」
「あ、そう。じゃあな、達者でやれよ(もう二度と会わないことを願って)」
「もう少し別れを惜しんで欲しかったなぁvま、また近いうちに会いにくるつもりだけど◇」
「……」
「逃 が さ な い よ」
自分の口に当てた人差し指で俺の唇を撫で、ヒソカは妖しげな笑みを浮かべながら俺の耳元でそう囁いた。
この時俺の全身を駆け巡ったのは悪寒を通り越してもはや電流だったのではないかと思う。
そうでなければ極度の戦慄または氷ついた血液かああ誰か無我の極地というものが本当に存在するなら俺に継承してはくれないだろうかどんな修行にも耐えますからっぎゃあああああああああああ!!
「――――――……!!」
「それじゃあねv」
最後にさらりと髪を一撫でしてからヒソカはゆっくりと立ち去っていった。
…一日中「千里眼」をしてでも逃れたいと思うのはおかしいことじゃないよな。
はあ、と溜息を吐きながら力の限り脱力してベンチに横たわる。
しろい天井を見上げると、先程からずっと痛み続けていた右手が一層疼きだしてきた。
「――――――…幻影旅団、か」
逃げてはいけない存在。いつかは対面しなければならない時が来るだろう。
…その時は
その時は、俺がこの世界にいられる最後の瞬間なのだろうか。
俺は自分の中に生まれつつある
何かに気付かないまま、右手をキツク握り締めた。